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感想・考察など

感想 舞台「吸血鬼すぐ死ぬ」

本日6月10日17:00公演、舞台『吸血鬼すぐ死ぬ』を観劇してきました。

www.marv.jp私はモリミュ、劇団ドラマティカ以降山本一慶さんのファンなのですが、主演の面白吸血鬼を彼が演じると聞いた瞬間、この舞台は面白くなるに違いない!!と期待大で喜び勇んでチケットを取りましたが、結果、期待を裏切らない、むしろ期待以上の面白い作品に仕上がっていましたね。チケットが一枚しかないのが大変悔やまれますが、おとなしく千秋楽配信とBlu-rayを購入することとします。

 

各キャラの感想

ラルク(山本一慶さん)

はい、彼がいれば舞台の上で何が起きても問題ありません。トラブル、アドリブ、大寒波なボケ、すべてを拾ってエンタメに昇華・笑いに変えてくれます。そんな彼の芝居力や立ち回りの安定感を随所に感じることのできる作品でした。一慶さん演じるドラルクは声を張ったり大声を出したりすることはないのに、なぜかよく通るノーブルなお声で、相方のロナルドだけでなく、いろんな人がいろんなところでひっきりなしにかますボケを片っ端から拾いまくります。声のトーンも突っ込みではなく、ついぽろっと思っていたことが口に出ちゃったという感じ。
例えば砂を用意してくれる黒子さんに対して「あ、そういうことね」といただきますのようにお手々を合わせたり、舞台上の砂をモップで片づける黒子さんに対して、「あ、ご苦労さまですー」とご挨拶をしたりしていて、そのたびに客席からクスクスという笑いが起こっていました。
後半のバカエピソード暴露大会でも、各人がおそらくアドリブで一生懸命考えてくるであろうエピソードにちゃんと突っ込む。「ロナルド君、それって船も鉄だけど水に浮かぶと思うよ」ドラルク一慶、ボケてくれた人への敬意を忘れない。けなげ礼儀正しい吸血鬼ですね。
あと忘れてはいけないにが、砂になるシーン。
公演PVでもネタバラしをせず、劇場に来てからのお楽しみにされていた注目の演出を、不安と期待でドキドキしながら待っていたのですが、当然のごとく予想を180度を裏切られて凄くよかったです。正直とても不安だったのが、昨今技術が発達しているプロジェクションマッピングでお茶を濁したり、薄膜スクリーンが登場したりするのではという可能性だったのですが、すべて物理的に砂になっていて最高でした。物理はすべてを解決する。力こそパワーです。
ロナルドとの出会いのシーンでは、死ぬのが思ったよりワンシーン早くて、え???そこ???ってなりましたし、まさか緩衝材を頭からかぶって崩れ落ちるとはつゆも思いませんでした。公演前のインタビュー記事で、一慶さんご本人も「どうやって砂になるのか今から楽しみです」「砂掃除の休憩があったりしてね」と言っていたのが現実になって本当にびっくりです。そのほかの砂になり方のバリエーションも豊かで、砂っぽい模様の布をかぶったり砂っぽいわしゃわしゃで隠れたり、砂になるだけでなく砂へのなり方でもひと笑いとっていくのが本当に最高でした。こういう人力舞台大好きだそ。

 

半田(吉高志音くん)

モリミュのラスキンで認識した期待の新人さん。フレッシュで一生懸命な演技がキャラクターととてもあっていました。持ち前の歌唱力はもちろんなのですが、アドリブを任されていたシーンが結構ありましたね。
例えばクッキーのシーン。
床下から登場するヒナイチちゃんに対して口説きながらクッキーをパクパク食べさせるシーンの後に登場する半田がドラルクにクッキーを食べさせるシーン。
半田役の吉高志音くんが、クッキーを貯金箱に硬貨を入れるかのように、ドラルクのお口にクッキーを入れてドラルクが喋れなくなってしまっていました。ちょっと半田回収できずに困っていましたのですかね?お水を取りに舞台をはけて戻ってきたりしていたようです。君の周りには優秀な先輩がたくさんいるので、これからも頑張ってね。今後がもっと楽しみです。

 

ロナルド(鈴木裕樹さん)

山本一慶さんだけでなく、毎度ひっかき回される舞台の屋台骨として、彼の力も大きいことを忘れてはいけません。鈴木さんのロナルドはなんといっても観客が振り落とされないハイテンションと、間を持続させるのがとても上手いですね。キャラ自体はいい意味で裏表や屈折したところがなくてシンプルなんですが、たぶんあの舞台をダレさせることなく観客を乗せ続けるのが本当に大変。彼は事前インタビューで「テンションを大事にしています」と繰り返し言っていたので、勢いで押し切る舞台なのか?と少し懸念していたのですが(私は初見舞台に対する懸念事項が多すぎるタイプの人間です)、めちゃくちゃ安定感のあるベテランの役者さんじゃぁないですか、ご謙遜が過ぎますよ。所作の端々までロナルドを宿していて、それで出てくるのがくるのがあのテンションとどなり声なんだなと、原作も知らない私も納得させられてしまいました。
ナギリのエピソードで、一人で抱え込んでイライラしているシーンも、あれはあそこから何かしらの感情吐露につながる前振りではなくて(だとしたら、あまりにもほうれん草ができないダメ主人公のやらせでダルいなぁなんて思ったのですが)、別にどうでもいい状況で、一人で抱え込んで主人公面しようとしているロナルドを、くそ面倒くせぇ!!とちぎって投げるための前振りなんでしょうね。あまりにロナルドがちゃみちゃみしていて最高ですし、吐き出すようね「みんな、聞いてくれ!!」にたいして、ドラルクが「いや聞いてるよ」と皆があきれたような視線をよこす間で笑いが起こるのもよかったです。

 

最初っから最後までくだらない内容をとことん真面目にやると、こんなクオリティのエンタメになる。ひっさしぶりに劇場で思いっきり笑って、最高にエンターテイメントされた一日でした。くだらないことを真剣にやると面白い舞台の完成形、ここにありです。